ツバメは渡り鳥です。
標識調査の結果などから
秋になると
日本列島を南下して沖縄などの南西諸島を経由して
フィリピン、インドネシア、マレーシアなどの
東南アジアで越冬していることが明らかにされています。
春にはその逆ルートでわたってくるようで、
気象庁の生物季節観測値でもツバメの春の初見の記録は
九州など南の地域が早くなっています。
ところが、東京から南へ約1000キロメートルの小笠原でも
ツバメが観察されるのですが、
ここで観察されるツバメは
「渡り鳥」なのか「迷鳥」なのか明らかになっていません。
小笠原の先には、広い広い太平洋がひろがっ ています。
小笠原で観察されるツバメはどこから飛来したのでしょう?
もっと南のどこかの越冬地からだとして、
そんな長距離を小さなツバメが大海原を越えられるのでしょうか?
さらに、北上して繁殖のために伊豆諸島や本 州へ向かうのでしょうか?
小笠原諸島とその北につながる伊豆諸島では、
春も秋もツバメを観察することができます。
小笠原ではツバメは繁殖も越冬もしていませ ん。
つまり、春、小笠原で観察されるツバメたちは、
太平洋の大海原を越えて来たことだけは確かなのです。
太平洋のツバメの生態を知りたい!
そう思ったのがこの調査を始めたきっかけです。
けれどもその生態はほとんどわかっていません。
島に現われるツバメは、何処で越冬し、
どのように飛来したのでしょう?
『小笠原諸島〜伊豆諸島 ツバメの渡り調査』の目的は、
太平洋の島々で観察されるツバメの生態を
少しでも明らかにすることです。
もし、ツバメたちが、
小笠原諸島より南にあるどこかの越冬地から
飛来しているのであれば、
南にある島ほど初認日が早いはずです。
調査への参加を呼びかけるチラシを作製し、
小笠原や伊豆諸島の島々の、観光協会、公共施設、船客待合所、
役場などに設置をお願いしました。
島民の皆さんと協力してツバメ観察のネットワークを作り
小笠原諸島、伊豆諸島でのツバメの観察記録を集めて、
どのように飛来して来たのかをしらべます。
2018年の春にはじめて調査を開始しました。
2018年のチラシ
小笠原諸島、伊豆諸島の島民の、のべ178名のかたから、
199件の観察記録を頂きました。
その結果、
母島と父島では2月中旬、
三宅島までの伊豆諸島南部では3月中旬、
神津島から大島までの伊豆諸島北部では3月下旬〜4月上旬にかけて、
ツバメの初飛来が観察されました。
2018年と同様に
このことは、春に小笠原諸島や、
伊豆諸島で観察されるツバメたちが
風に飛ばされてやってきた迷鳥ではなく、
まだどこにあるのかはわからないけれど、
小笠原より南にある
ツバメの越冬地から日本をめざして飛来して来たことを
示していると考えられます。
観察記録を呼びかけた2019年のチラシ
小笠原諸島、伊豆諸島の島民の
74名の島民のみなさま、のべ194名のかたから、
観察記録を頂きました。
その結果、
母島と父島では2月下旬、
伊豆諸島南部では3月上旬、
伊豆諸島北部では3月中旬〜4月上旬にかけて、
ツバメの初飛来が観察されました。
南にある島ほど、初認日が早い傾向にありました。
このことは、春に小笠原諸島や、
伊豆諸島で観察されるツバメたちが
風に飛ばされてやってきた迷鳥ではなく、
まだどこにあるのかはわからないけれど、
小笠原より南にある
ツバメの越冬地から日本をめざして飛来して来たことを
示していると考えられます。
この結果を図や表にまとめて
2018年の日本鳥学会でポスター発表しました。
2016年と,2017年の春に小笠原諸島の父島と母島、西之島
聟島列島の鳥島、伊豆諸島の八丈島へ行き
ツバメを観察しました。
これらの調査について
2017年の日本鳥学会でポスター発表しました。
2017年ポスター(クリッ ク)